はじめに
日本の050電話番号を使って音声AI(Retell AIなど)を導入しようとすると、必ず「SIPの接続方式が合わない」という壁に遭遇します。
特に重要になるのが、「SIP REGISTER」と「SIP Trunk(SIPトランク)」という2つの接続規格の違いです。本記事では、この通信規格の違いと、050番号をAI電話に繋ぐための対策を分かりやすく解説します。
SIP REGISTERとは
仕組み:動的IPアドレスからキャリアサーバーへのログイン
SIP REGISTERは、主にIP電話機やスマートフォン上の電話アプリが、通信キャリアのサーバーに対して「私はこのIPアドレスでログインしています。私の番号宛ての着信はここへ送ってください」と定期的に接続先情報をアップデート(登録)する仕組みです。
IPアドレスが変動するモバイル回線やWi-Fi環境で、正確に着信を受けるための仕様です。
【IP電話アプリ (スマホ)】 ➔ (REGISTER: ID / パスワードでログイン) ➔ 【キャリアサーバー】SIP Trunkとは
仕組み:サーバー同士を固定IPやドメインで直結する回線
SIP Trunking (SIPトランク)は、IP-PBX(中継交換機)や企業の通話システムと、通信キャリア(またはRetell AIなどのプラットフォーム)の間を、固定のIPアドレスや静的ドメインで直接繋ぐ方式です。
定期的なログイン登録(REGISTER)は行わず、あらかじめ合意された通信ルートに直接INVITE(呼び出し)パケットを投げ合います。大量の電話回線をまとめて制御するエンタープライズ用途の接続方式です。
【中継PBX (Asterisk等)】 ➔ (静的ルートで直接INVITE送信) ➔ 【Retell AI】両者の違いの比較
| 比較項目 | SIP REGISTER 方式 | SIP Trunking 方式 |
|---|---|---|
| 接続アプローチ | クライアントが動的にログイン維持する | サーバー同士を静的ルートで直結する |
| 登録要求の頻度 | 数分に一度(常時キープアライブ) | 不要(初期設定のみ) |
| IPアドレス | 変動IPアドレスでも利用可能 | 固定IPアドレス、または固定FQDNが必要 |
| トランスポート | 主に UDP (5060) | TCP (5060) / TLS (5061) が主流 |
| 国内回線の実態 | 個人・店舗向け050回線の主流 | 法人向け大規模専用回線 |
050番号と音声AIが直接繋がらない原因
Retell AIやVapiなどの音声AIプラットフォームは、インフラの仕様上 「SIP Trunk」方式 しか受け付けていません。
しかし、日本で安価に取得できる050番号(ブラステル My 050など)の多くは 「SIP REGISTER」方式 で提供されます。このため、両者の通信仕様が噛み合わず、直接繋ぐことができないという問題が発生します。
解決策:中継ゲートウェイ(Asterisk)によるブリッジ
このプロトコルのギャップを解消するために、クラウド(AWS等)上に Asterisk などのゲートウェイサーバーを配置し、以下のように両方式を仲介させます。
- Asterisk は、ブラステルに対してクライアントとして振る舞い、常に
REGISTERを送り続けて050番号の着信を受け取れる状態を維持します。 - ブラステルから着信があると、Asteriskはパケットを変換し、Retell AI に対する
SIP Trunk(TCP接続)として着信を転送します。
この中継構成によって、安価な国内050番号でも最新の音声AIへ接続できるようになります。